・iDeCoのメリットと注意点
・本当に簡単?iDeCoを開始から受け取りまでに必要な4つのステップ
2019年の参議院選挙前に「老後2000万円」問題が炎上したのは記憶に新しいと思います。事の発端は、金融庁の報告書で、以下の言及がなされたためです。その後、2019年9月25日は、事実上報告書の撤回がなされましたが、少子高齢化の傾向が改善されない限り、不安を払拭することはできないというのが実情です。
夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
15~64歳を現役年齢階層として、65歳以上を高齢年齢階層とした場合、高齢年齢階層1人を支える現役年齢階層の人数は、1950年時点では、12.1人だったのが、2017年では2.2人、なんと2065年では1.3人の予測なっています。これにより、受給開始年齢が上がったり、将来実際に受け取れる年金の割合が少なくなってくることも十分に考えられます。
以上のことから、公的年金だけでは、老後の生活を送れるかは、疑問が残ります。今この瞬間から公的年金を補完するために個人年金として注目を浴びている「iDeCo」をわかりやすく解説したいと思います!
公的年金だけで生活できるの?
総務省の家計調査年報によれば、老後の夫婦世帯の月平均生活費は、26万8,000円で、公的年金により、もらえる月平均収入は、21万3,000円です。
従い、毎月5万5,000円の赤字を計上することなり、年間で言えば66万円になります。かなり大きな額だと思いませんか?90歳まで生きたとしたら、ものすごい赤字額になります。そして、これは最低限の生活を送るための生活費であり、旅行にいったり、温泉にいったり、もう少しゆとりのある生活を送る場合は、加えて月5万〜10万円必要になります。自分が大病を患わったりすると、さらに出費は増えます。おそろしいですね。
年老いたときに貯めようと思っていて、時既に遅しなので、偶然にもこの記事を読んでいただいた読者のみなさまには、今からでも将来に向けて収入源を確保するように検討していただきたいです!
iDeCoとは?
iDeCoは、英語表記である、Indvidual-type Defined Contribution pension planを略したもので、日本語では、個人型確定拠出年金と呼ばれています。
個人で毎月一定額を拠出して、積み立てることにより、将来年金として、お金を受け取れる仕組みです。冒頭でも述べたように、老後の資金は、公的年金のみでは、安定した生活を送ることができないので、それを見越して動いた個人がiDeCoに加入し始めており、年々利用者数は増えています。
2017年に法改正されて以降は、ほぼ全ての人が加入することができるので、これを使わない手はありません!加入条件は以下の通りになります。
・国民年金保険料を支払っている(未納はNGです!)
・日本国内に居住している
・勤務先の会社に企業年金がない(企業年金がある場合でも、会社が個人年金への加入を認めていれば可)
メリット①:手数料が安い
メリット1つ目は、運用管理手数料が安い点です。投資信託で運用した場合は、運用資金の4%取られたりすることもありますが、iDeCoの場合は、どこの金融機関も割と低めに設定されています。
新しく加入する場合は、初回の手数料として、約3,000円、運用期間中にかかる毎月の手数料は銀行は500円程度のかかりますが、ネット証券であれば200円以下に抑えることができます。
メリット②:少しの資金から始められる
メリット2つ目は、少額資金から運用できる点です。例えば、日本株を運用するといった場合は、最低投資額として、安くても数万円〜数十万円かかりますが、iDeCoは、最低投資額5,000円で、1,000円単位で積み立てることができ、非常使い勝手がよいです。
お酒とタバコを我慢すれば、毎月必ず積み立てができちゃいます。
メリット③:税制面で優遇される
メリット3つ目は、税金麺で優遇される点です。金融投資をして、運用利益が発生した場合、譲渡所得に係る税率がなんと20%になります。ところが、iDeCoの場合、運用利益が発生しても、非課税です。
拠出した掛け金は、全額所得控除が可能です。課税所得から、年間の掛金を差し引いた金額に課税されるので、節税対策にもなります。
最後に、給付金は、60歳以上で受け取ることが可能ですが、受取時も税制優遇措置が適用されます。
iDeCoを始める場合の注意点は?
上記では、iDeCoにたくさんのメリットがあることを紹介してきました。では、注意することはないのでしょうか。
注意点①:受け取りは60歳から
iDeCoに拠出したお金は、すぐに受け取れるわけではありません。個人型確定拠出年金なので、老後の生活のため資金です。旅行に行く、車を買う、引っ越し費用に充てたいと思っていても60歳を超えていなければ、受け取りはできませんので、ご注意ください。
老後の生活ためだ!と気合を入れて、毎月の拠出額を増やしすぎて今の生活が苦しくなるのは、本末転倒なので、しっかりと収支計画をした上で、iDeCoを始めましょう。
注意点②:維持管理のための手数料がかかる
手数料が安いということは、メリットで紹介しましたが、0円ではないということです。手数料の区分と月額/年間の手数料は以下の通りになります。
手数料の区分ごとに支払う先が異なりますが、「3.運営管理手数料」については、金融機関によって手数料が異なりますので、手数料が安いところを選ぶようにしましょう。
初期開始時には、企業型年金から移換する場合も同様に、2,829円の手数料がかかります。
手数料区分 | 説明 | 月額 | 年間 |
1.口座管理手数料 | サービス主体である国民年金基金連合会が徴収する手数料 | 105円 | 1,260円 |
2.資産管理手数料 | 国民年金基金連合会から委託を受けて資産を管理する資産管理サービス信託銀行に支払う手数料 | 66円 | 792円 |
3.運営管理手数料 | 金融商品の選定や制度内容の案内などをする運営する金融機関に支払う手数料 | 0円~最大458円 ※金融機関により異なる | 0円~最大5,496円 |
注意点③:運用は個人責任!元本割れのリスクあり
掛金を運用する金融商品を選ぶのは、投資信託ではなく、自分であり、当然ながら元本割れのリスクが発生します。
元本が保証されている金融商品もありますが、大きなリターンは期待できません。元本が変動する商品に対しては、リスクが付き物です。
ただし、ある程度の投資・経済・市場の知識と金融商品の特性を理解すれば、リスクは最小限に留めることができるので、日ごろから学ぶクセをつけておきましょう。
iDeCoを始めるときの4つのステップ
それでは、iDeCoを始める場合の開始〜受け取りまでの4つのステップをご紹介します。
とっても簡単です。
2.拠出
3.掛け金の運用
4.給付金の受け取り
ステップ1. 運用機関の選定
iDeCoを始めるためには、どこかの金融機関で口座を開設する必要があります。既に持っている口座で、iDeCoを開始することもできますが、上記の通り手数料が各行で異なるのと、金融機関によって金融商品の充実度が異なるので、今一度確認しましょう。
<各金融機関の比較>※2020年1月時点
金融機関 | 初期開始時 | 口座・資産管理手数料 | 運用管理手数料 | 受取時(都度) | 投資信託商品数 |
マネックス証券 | 2,829円 | 171円 | 0円 | 440円 | 25本 |
楽天証券 | 2,829円 | 171円 | 0円 | 440円 | 31本 |
SBI証券 | 2,829円 | 171円 | 0円 | 440円 | 36本 |
大和証券 | 2,829円 | 171円 | 0円 | 440円 | 21本 |
野村證券 | 2,829円 | 171円 | 0円 | 440円 | 27本 |
みずほ銀行 | 2,829円 | 171円 | 260円 | 440円 | 15本 |
三井住友銀行 | 2,829円 | 171円 | 260円 | 440円 | 18本 |
三菱UFJ銀行 | 2,829円 | 171円 | 260円 | 440円 | 25本 |
イオン銀行 | 2,829円 | 171円 | 260円 | 440円 | 23本 |
ゆうちょ銀行 | 2,829円 | 171円 | 259円 | 440円 | 23本 |
上表の通り、ネット証券各社の手数料が安く、その中でもマネックス証券は、手数料・金融商品の充実度はトップレベルです。運用サポートに関しても、投資初心者向けに、iDeCo専用のロボアドバイザーが、ユーザ属性に応じて、最適な銘柄の組み合わせを提案してくれるようなサービスもあります。
電話問い合わせは平日のみならず、土曜日9:00~17:00(祝日を除く)も対応してくれますので、安心して利用できます。筆者もマネックスを使ってます!
ステップ2.拠出
iDeCoで毎月拠出できる限度額は、職種や置かれている立場によって大きく変わってくるので、注意してください。
月68,000円まで
①月12,000円まで 企業型確定拠出年金以外の企業年金
②月20,000円まで 企業型確定拠出年金のみに加入
月12,000円まで
月23,000円まで
掛け金の拠出は、毎月行うのが一般的ですが、ボーナスと合わせて、年1回や年2回の拠出をすることも可能です。ただし、掛け金額の変更は、年1回しかできませんので、ライフイベントに合わせて、慎重に検討すべきでしょう。
預金残高を確認しよう
ステップ3.掛け金の運用
運用機関の選定と拠出額を決めたら、いよいよiDeCoで運用が開始できます。
毎月の掛け金を投資するわけですが、一般的な金融投資と同じで、自分に合った金融商品を選んで投資することになります。
金融商品は、大きく分類すると、「元本確保型」と「元本変動型」の2つが存在します。
元本確保型
元本割れがなく、低リスクの金融商品です。商品としては、「定期預金」や「年金保険」が対象になり、一定額を預けるタイプを指します。
リスクが少ない分、年利が0.01%の低金利の時代ですので、資産が大きく増えることは期待できません。
元本変動型
元本が変動する、中~高リスクの金融商品です。商品としては、「投資信託」が対象になります。
金融機関が用意した投資信託から好みの商品を選択することで運用が可能です。商品には、債券、REIT、株式など多岐に渡ります。
元本確保型と元本変動型を併用しよう
20代30代の若いうちは、リスクを取ってでも、利益が得られる元本変動型の投資信託を使って積み立てていくのがおすすめです。ただし、全額を元本変動型で運用するとリスクが高いので、元本確保型と併用することでリスク分散するとよいでしょう。
ステップ4.給付金の受け取り
注意しなければならないのは、iDeCoで給付金を受け取る場合は、途中で受け取ることは一切認められません。60歳以上にならないと受け取れません。
もう1つ注意すべき点は、iDeCoの通算運用期間が10年以上経っていないと、受け取ることができません。55歳から運用を始めたら、65歳以降にならないと受け取れないということです。
上記の上限を満たしていれば、受け取ることができるのですが、まだ現役で十分に活躍しているので、いますぐ受け取りたくなければ、受け取る必要は全くありません。自分の好きなタイミングで受け取ることができます。
受け取り方は、以下の3パターンがあります。
パターン | 説明 |
一括で受け取る | 一括で受け取る場合は、退職金扱いで受け取ることになるので、退職所得控除を受けることができます。 |
分割で受け取る | 5〜20年の期間で分割で受け取る場合は、運用機関に、口座維持管理手数料と給付事務手数料を支払う必要があります。 |
一括と分割の両方で受け取る | 一括と分割と両方で受け取る場合は、例えば、一時金として受け取りながらも、残りを75歳までに分割して受け取ることができます。 |
まとめ
以上、iDeCoのメリットと注意点、始める場合のステップについてご紹介してきました。
特に、自営業者やフリーランスの人は、月68,000円まで積立が可能であり、他の職業と比べてとても優遇されています!
積立した金額が所得金額から控除されますので、年収600万の場合、適用される税率は20%で、すなわち、iDeCoで毎月68,000円を積立するだけで、年間約16万円も支払う税金を減らすことができるのです!
この節税効果は大きいです。iDeCoを最大限に活用しましょう。
それでは、あなたの老後生活が、少しでもゆとりある生活を送れますように!
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